晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「老人と海」

 言わずと知れた名作「老人と海」。世間的な評価を踏まえて「名作」と書いてはみたが、昔読んだときには名作だとはまったく思わなかった。「老人の独り言をずっと聞かされた」というのが、今回読むまでの印象だった。それ自体に間違いはない。

 今回はふとしたはずみで手に取ったのだが、なんか妙に面白かった。歳を取ったと言うことのなのだろうか。過程を楽しめた感があるのだ。ランニングを例にすると、若い時はひたすらスピードや距離ばかりが気になって周りを見る機会を逃していたのが、体が思うように動かなくなって逆に公園の木々の変化がわかりはじめるような感じに近いのだろうか。主人公の老人の所作や言葉を一つ一つ受け止めるように読めた気がする。

 あらすじを改めて書く必要はなさそうだが、84日間の不漁に見舞われた老人がひとりで海に出て、カジキをしとめるがその血のにおいにつられてサメが寄ってくる。そのサメを追い払うために格闘する。

 筋はシンプルで、20年前か30年前に読んだ自分の感想も間違ってはいない。おそらくもっと「動き」がある物語だと期待していたのではないか。映画「ジョーズ」ではないが、来るぞ来るぞと思いつつ、肩すかしを食らったような気持ちだったのだろう。その後、英語で読んでみようと手に取ったことがあった。ヘミングウェイの文はジャーナリスティックで、読みやすいと聞いていたからだ。大筋が知っているので、なんとか読めるだろうと思っていたのである。

 しかし、舞台はキューバ。主人公の老人はサンチアゴ新潮文庫の訳文による。訳者は高見浩さん)。そもそもスペイン語で話しているのを英語で書いているので、スペイン語がやたらと出てくる。英文だとイタリックに表記されていたりする。もう、気分が萎えてしまい、あまり進まなかった。今なら、当時よりはスペイン語がわかるので、もうちょっと楽しめるのかもしれない。

 阿部公彦さんだったか、誰か忘れてしまったが、ヘミングウェイの「老人と海」が割とシンプルな英語で書かれているのは、スペイン語から英語に訳しているような雰囲気を出したかったからだと読んだことがある。ここらへんはどうなのだろう。

 読書活動は終活レベルに入っていてもう読み直す機会はないかもしれない。原文にチャレンジという気持ちもわいてきたが、他の訳者で読んでみたい気もしている。幸い、話はそう長くはない。ヘッセを読んだときも思ったが、19世紀から20世紀あたりの話が自分に合っている気がしている。作家にもよるが、受け入れる土壌がありそうだ。