晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「一日江戸人」

 仙台に寄った際に、地元の老舗書店で購入したのがこの本。江戸の風俗や当時の流行を、杉浦日向子さんのイラストとともに紹介している。文庫本なのでイラストの部分の字が小さくて読むのに苦労したが、それはこちらの問題。単純に面白かった。落語を聞く際にも、イメージが膨らみそうである。

 江戸時代は、いわば体を使う仕事が多かったので、当時の男性は屈強な体つきをした人が多かったそうで、なので、か細い男性の方がもてたとのこと。女性の方はより細かく変遷が紹介されていて(資料が多いのだろうか)、明和二年(1765年)あたりには、7頭身のなで肩タイプ、20年後には10頭身の今で言う西洋型、その10年後には8頭身の肉付きの良い女性、そのまた30年後(文政七年頃)には6頭身の猫背で脚の短い女性が「美女」の定義だったそうだ。美意識というのは変化があるものだからさほど不思議でもないが。

 銭湯も混浴の時代が長かったそうだが、当時は湯気がもうもうとしていたり、若い女性は母親や婆さんにガードされていたりして、それほどのことはなかったとのことだ。混浴は明治に入った1869年になくなったようだ。面白いと思ったのは、湯気が多く湯船に入っている人が見えない場合があったため、「ひえもんでござる」と断って入るのが礼儀だったとか。「ひえもん」とは「体が冷えている人間」という意味だそうだ。こういうのってさほど大事じゃないのに、忘れられない。他に頭に入れておくことはたくさんあるはずなのに。

 ラクダが、首が鶴、こぶが亀を思わせるとして、めでたいと思われたらしい。もちろん、性質的に鈍くさい人も「らくだ」と呼ばれたそうだが。江戸の味覚は「三白」(白米、大根、豆腐)に集約され、鯛と白魚を加えて「五白」と数える場合もあるそうである。いずれも歳をとってから、より楽しめるようになった食材である。本に紹介している料理も、シンプルながらちょっと試してみたいのがあった。

 他にも、シャレ(言葉遊び)や将軍の一日、春画など、たぶんまた拾い読みする機会があるだろう。