晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「フィンランド語は猫の言葉」

 フィンランドと言われて思い浮かぶのは、まずサウナ。今はブームだそうだが、もっと長いスパンでのファンである。よくサウナに泊まった記憶がある。それと、サッカー選手のリトマネン。結構好きなタイプの選手だった。あとは、ムーミンノキアシベリウスあたりか。ノキアの着信音はいまでもお気に入りである。

 この本もふとしたことで手に取った。実は、ノルウェー関連の調べものがあって、ネットでいろいろと調べ回るうちに、地域がずれてこの本にたどり着いた。タイトルがあまりに魅力的なので、こちらの方が印象に残ってしまったのだ。で、有楽町の三省堂書店で見かけた際にゲット。

 簡単に言うと、著者である稲垣美晴さんのフィンランド留学体験記。著者は自分より年長なので、幾分昔話なのだが、文化出版局講談社文庫、猫の言葉社(著者が立ち上げた出版社)から角川文庫と形を変えながらも、ロングセラーとして読み継がれていることを考えると、異文化体験という点で、まだまだ通じる気がした。正直、この本を通じて、覚えたフィンランド語は一つもないのだが、それでも身近になった気がするから、面白いものだ。

 言葉、文化、人との距離感、エストニア語やハンガリー語に近いということ、そして、いまや日本でもよく耳にする「ロウリュ」。サウナや健康ランドで「ロウリュをやる」となるとたまらずその時間に合わせて、サウナ室に向かう自分だが、なるほど、タオルやうちわを使って熱気を充満させる行為そのものや手法というよりは、「蒸気」のことを「ロウリュ」というのか。しかも、もともとは「霊魂」という意味があったとのこと。その昔は、サウナで子どもを産み、花嫁は式の前にサウナに入り、老人はサウナに運ばれて亡くなったという。人生の節目に登場する場所だったようだ。

 タイトルは、著者が現地の作文コンクールに出した作文のタイトルから。フィンランド人の「ニーン」という相槌が著者には猫の言葉のように聞こえたらしい。作文コンクールの選には漏れたものの、新聞の記事として取り上げられることになったそうだ。しかしまあ、よくぞここまでのレベルに達するものだと感心させられる。解説は、黒田龍之介さん。ここでお会いするとは。