自分の子どもが英語を勉強したがらないわけじゃないのだが、小学校からの英語も科目化(小5、6)しているし、ちょっと読んでみた。この岩波書店のジュニアスタートブックスの対象は中学生のようだ。このシリーズはこれまで SDGs などをテーマにしている。ジュニア新書との住み分けが気になるところだが、紙も軽くて、色刷りなのはいいが、ちょっと高いなあというのが印象。
NHKの番組などでもおなじみの鳥飼玖美子さんが、英語学習の意義などを伝える。とはいえ「英語は大事」とやたらと強調している本ではない。近年、小学校で英語を教えるようになって、予想通りと言うべきか、早期英語教育が早期の英語嫌いを生み出しているらしい。本のタイトルは、鳥飼さんが実際に中学生から耳にした言葉をそのままいただいてきたものだ。
人生において英語はそんな重要ではないという。日本に住んでいる限り、英語が話せなくてはいけない局面に追い込まれることは、ほぼないはずである。英語でできれば、もっと給料が上がったのになんてことはあるかもしれないが。
無理する必要はない。でも、中学においては必修科目だし、中学程度の英語を身につけておくと、今後いろいろと役に立つ場面があるよと、Kポップのアイドルが使う英語を例にして、励ますような内容になっている。そして、できれば日英のほかにもう一つ言語を学ぶと異文化を知るうえでいいんじゃないかと勧めている。
ここで鳥飼さんが言っているのは、完璧に身につけろ、スムーズにコミュニケーションしろと言うことではない。異文化への興味が英語や外国語への興味を後押しする形で、多少は緩くてもいいということだと思う。もちろん、言葉というのは詰めていけば、詰めただけの楽しみもでてくるのは確かであるが。
基本的には、英語をそんなに毛嫌いしないでという話である。鳥飼さんの英語関連本は、学ぶ側を励ますような内容が多い気がしている。文法がどうのというのって、面白くないじゃないと言っている風でもある。
一方で、外国語を学ぶって簡単じゃないのよということ。とことん上手になりたかったら、やることをやらなきゃねと突き放したところもあるように感じる。それは、日本語を学ぶ外国人だって同じことで、ピーター・バラカンさんやデイブ・スペクターさんだってそれなりの努力によってあれだけの日本語力を身に着けているのだと。逆に言えば、できないからとそんなに苦にしないでともとれる。
最後には、自己肯定感を持ってやりなさいということ。人と違うことを恐れずに、違っていいんだという気持ちを持つことだと。同時に、自己効力感という言葉も紹介している。これは、「目標を達成する能力への信頼感」を指すらしい。初見の言葉だが、これは大事な言葉かもしれない。英語とは別なところで、学ぶべきことがあったような本だが、これは著者の意図と割と近い気がする。