晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「音楽と生命」

 3月28日に亡くなった坂本龍一さんと、「動的平衡」シリーズで知られる生物学者福岡伸一さんの対談をまとめた本。そもそもはNHK Eテレの番組で放送された対談を加筆・編集して一冊の本になった。刊行日が亡くなった翌日の29日になっているのが、なんとも複雑な気持ちにさせられる。死去が報道された4月に入ってから購入。YMO誕生がきっかけで坂本さんの存在を知ったが、その後はずっと第一線にいた音楽家だった(少なくとも僕の中では)。

 前半の対談が教授(坂本龍一)中心で、後半が福岡さん中心。終わりの対談は、「坂本龍一 Art Box Project 2020 『2020S』」の冊子からだと記されているが、これは何なのかはわからない。知識人同士の対談なので、こちらの知識がついて行けない部分がある。

 大きなテーマは、ロゴス(言葉、論理)とピュシス(自然)の対立。この二つの言葉が対談の中に繰り返し表れる。自然を記述しようとすると、それはロゴスになってしまうという。分かるような分からないような。二人が話す、一回性と再現性に近い気もする。

 個人的には、福岡さんが坂本さんに楽譜の起源について訊ねたところが面白かった。教授によると、古代ギリシャにもそれらしきものがあったが、中世が起源だと話す。すると福岡さんが、楽譜と遺伝子には何らかの対応関係があると語り出す。どちらも記述されているが、実際は別物だということ。それがまた、ロゴスとピュシスにつながると。

 なんとなく分かった気になったが、分からないところもある。はっきり分かるというのは、それこそ形になってしまうのかも。一旦書棚にしまって、また時間をおいて読んでみよう。

 福岡さんが「有限であるからこそいのちは輝く」と話している。それを示してくれた一人が坂本龍一だと思う。