晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「英語は10000時間でモノになる」

 ランニング同様、英語も本を読んでギアを入れることがある。この「英語は10000時間でモノになる」は、ベンチャー企業の創業者から事業家・教育者に転身した橋本大也さんが自らの英語学習実践法を綴ったもの。普段目にする英語教育に携わる大学や予備校の先生が書いたものとは違ったアプローチなので刺激になった。ITやAIを活用しつつ、しっかりハードワーク。橋本さんは40代半ばまで英語がまともに使えなかったのが、いまや洋書を年に100冊ほど読むらしい。「まともに使えない」というのがどの程度を指すのか不明だが、洋書をそれだけ読めるのはすごいと思う。私は、月1冊も読めていないのだから。個人的には洋書の読み方に関わる部分に強く惹かれた。自分は「話す」よりは「読みたい」タイプだ。本自体は「聞く」「話す」の経験談も書かれていて、その方面を目指す人も参考になる部分もあると思う。

 タイトルには英語を学ぶのに10000時間をかけろというが、当初は中高(いまは小学校も)の授業で学んだ時間を含んでいると思っていた。それは関係なく、英語漬けになれというのがコンセプト。10000時間は大変でしょ、それなら日本語を使う時間を減らしなさいということらしい。著者は、「脳内留学」という言葉を使っている。

 スマホの言語設定を英語にして、ニュースを英語で読み、洋楽とニュースを英語で聴き、英語圏の企業に株式投資をし(カネがなくてできないが、ある意味本気になるかも)、英語でメモをとり、英語で考え、独り言も英語で話す。英語のパンフで観光するなど。よくぞまあ、ここまでできるものだと関心してしまう。英語でメモを取れというのは、たぶん日本語の会議などで耳に入ったものと解釈した。聞いた英語を英語でメモを取るのは、私にとっては至難の業だ。どちらかに集中してしまって、片方がおろそかというか、作動停止してしまう。

 著者は相当の読書好きのようで、私がこれまで経験(多くは頓挫)したこともしっかりと書かれている。読書で自然な言葉の並びが身につく、小説を読むと語彙の幅が広がる、ノンフィクションの方が序論に内容をまとめてあるので把握は楽など。橋本さんはどうやら私が突き抜けられなかった壁を破っているようで、その先の話も興味深い。

 文学賞受賞作品から選ぶ。先日の村田沙耶香さんと西加奈子さんの対談でも「ブッカー賞は間違いない」と話していたが、この本の巻末には英語圏文学賞が紹介されている。一応の読書好きとして一通りは知っているのだが、このように並べられると非常に参考になる。

 批評サイトの情報もよかった。しかし、ニューヨークタイムズの文芸批評は時に作品そのものよりも読みにくい(英語が難しい)。Goodreadsの使い方は参考になったので、盗ませていただくが、きちんと実践できるかどうか疑わしい。

 金銭的にできなかった、洋書とオーディオブックを掛け合わせる方法なども紹介されている。多くは買えないし、新作は高いだろうから、一つ古典作品で試してみようか。それこそ「老人と海」あたりが量的にも適当な気がしている。新年に向けて、また読書の目標を立てることになる。日本語はもちろん、英語での読書も少しハードルを挙げてみようという気になった。

 本に触れてない部分で気になったのが、著者の時間の捻出法である。これだけ英語学習に時間がかけられるって、普通のサラリーマンには難しいんじゃないのと言いたくなってしまう(いくら日本語を削ったとしても)。そのくらいは自分で考えてくださいと言われそうだけど。