晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「スカウト目線の現代サッカー事情」

 サッカー事情となると多少詳しい気でいたのだが、スカウトの世界はまったく知らなかった。イングランドのサッカー育成網となると、日本の野球を上回っているのかもしれない。というか、日本の野球界の方は将来的な競技人口に危機感を持っているだろう。競技の人気も問題だが、まず子どもの数が減っている。その意味で、イングランドサッカーの裾野の広さを思い知った気がしている。

 田丸雄己さんは現在Jリーグクラブのスカウトを務めている。同じ光文社新書で、「サッカー店長の戦術入門」を紹介したことがあるが、選手を見る目や分析力というは特にプロサッカー経験が必要とか、学生時代に高いレベルで競技していたなどの経験は必要ないらしい。

 田丸さんは1994年生まれなので、30歳あたり。日本の高校を卒業して英国に短期留学。Jリーグクラブやサッカーコンサルティング会社などに勤め、再びロンドンのセント・メアリーズ大学に進学し、在学中にチェルシーのアカデミー(育成組織)でスカウトのインターンを経験して、プロクラブのスカウトとして活動したそうだ。

 スカウトとは、選手の発見、情報収集、評価を担当する仕事。クラブ付きもあれば、フリーランスもいる。スポーツくじのデータ収集、エージェント、スポーツブランド企業が将来の広告塔を探している場合もあるという。年代別、ポジション別と分業化もされ、随分と下のリーグや学校にも原石を求めて網を張っているという。

 ということで、とにかくスカウトが多いとのことだ。プレミアリーグにはトップチームに20人ほど、アカデミーには50人ほどいるという。いわゆる選手が実名で登場するゲームの担当者(データ担当)が、データと本人の能力が差がないかチェックにすることもあるという。スカウト志望者も多く、競争率もとてつもなく高いという。大学にも「スカウト学部」なるものがあるのだそうだ。これはたぶん日本にはないかもしれない。ただ、野球の専門学校やスポーツマネージメントを学ぶ学校はあったと思う。

 新書なので何でもかんでも取り込むには無理があるが、最近の選手評価の指標を盛り込んで欲しかった。著者は、いずれファン向けに公開されるのではないかと書いている。打つ側、守る側と役割が決まっている野球に比べて、サッカーの指標は流動的なので、パスの正確さを出しても、勝負に有効なパスとただ回しているだけのパスとは単純に比較できない。田丸さんにとって初の著書だが、次回作も期待したい。目に鱗の一冊だった。