晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「サハラ砂漠の王子さま」「モロッコで断食(ラマダーン)」

 アマゾンのキンドル本のタイムセールで思わず買った本。しかし、こちらのキンドルが旧型のせいで、写真の表示に随分と時間がかかってイライラした読書となってしまった。純正カバーや充電用コンセントのコードも劣化した状態。そろそろ買い換えないと。その意味で、この本の魅力の一つである写真をあまり楽しめなかった。でも、いい表情をした人たちがうつっている。

 著者のたかのてるこさんが、就職前のモロッコ旅行を綴った本。1990年前半の話だろうか。単行本では「モロッコで断食」として1冊だったが、文庫化で「サハラ」「断食」と分冊化されたとのこと。個人的には、もうちょっと歴史とか政治とかモロッコ事情がわかるといいなと思ったが、それはこちらの頭がかたいのだろう。就職前の学生の貧乏旅行で国の事情を俯瞰してみるなんでできっこないし、旅先で出会う人たちと同じ目線で書いているからこそ共感を得るのだろう。彼女の最初の本の「ガンジス河でバタフライ」もそうだが、タイトルが印象的である。まあ、狙ってつけているのだろうけど。

 卒業旅行で欧州経由でモロッコに着いたたかのさん。入国直後から男性にせまられ(もっと危機感はあったのだろうけど)、もしくは仲良くなった現地女性の恋人からも積極的過ぎるアプローチを受け(これもほぼ犯罪的と受け止めたが)、そこからは現地で知り合った日本人男性と道中を共にすることにする。で、また旅行者であるイケメンのスペイン人と出会って、3人でサハラ砂漠へ。これが、準備不足というか無謀というか……。これが「サハラ砂漠の王子さま」の話。

 続いて、日本人男性と離れた後に、ラマダーン中に現地でベルベル人男性と出会い、その彼の家での滞在記がメインなのが「モロッコで断食」。一種の定点観測的で非常に興味深い。現代的なジェンダー的な視点からは突っ込みどころも少なからずあるのだろうが、イスラム教というのは生まれながらの男女の役割に沿っている部分も多いのだろう。ベルベル人男性の家族は、そのように育ってきたので当たり前かもしれないが、こちらから見るとずいぶん不便そうなのに、なんか無理がないというか、豊かに見えるから不思議である。

 この魅力の多くは(ほかのシリーズもそうだろうが)、著者のキャラによるところが大きい気がする。カンフーのまねごとで大道芸に参加するところあたりは、とても真似できない。以前、通りすがりに大道芸人にたいまつを投げてくれと頼まれて、うまく投げられずにパフォーマンスに水を差した記憶がよみがえってきた。

 たかのさんは、今も映画会社にいるのだろうか。大学講師もやっているらしく、「芸の幅」は広げているようだ。テルブックスから出ている「笑って、バイバイ!」「逃げろ 生きろ 生きのびろ!」などの本からは、新たなステージに入っているように感じられる。