晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「丹沢夜話」

 御殿場線山北駅から大野山を登る約15キロのトレーニングコースがある。箱根駅伝に出るようなチームがよく練習しているとのこと。フルマラソン並み(以上?)の達成感があるという。いつかは体験してみようと思っていたところに、古書店で「丹沢夜話」という本を見つけた。著者は、ハンス・シュトルテさんで栄光学園の副校長などを務めた人。同校の山岳部の創立者であるという(どうやらずいぶん前に廃部になっているみたいだ)。

 横浜に住んでいると、登山の趣味でもない限り、なかなか丹沢の方に足が向かない。最後に行ったのは6、7年前に宮ケ瀬に娘を連れて行ったくらいか。ハンスさんも15年ほど前に亡くなっているし、この「丹沢夜話」もずいぶんと長いスパンの出来事をまとめているので、さすがに事情は変わっているだろうが、雰囲気でもつかめればと読んでみた。歳とともに、自然への興味が増してきたこともある。

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「丹沢夜話」。続編も続々編もある(帯のついた画像を他のサイトから拝借しました)

 イエズス会の入会し、1934年に来日したハンスさんはドイツ人。ドイツ時代もワンダーフォーゲル部をやっていて、その国を知るにはその国の自然を知る、との考えを持っていた。丹沢に魅せられて山歩きに通うようになり、学校の施設として「栄光ヒュッテ」まで建てるまでになった(現在もある)。「天狗さん」の愛称で親しまれ、丹沢自然保護協会顧問も務めた。

 原生林なんて、神奈川県にはそぐわないと思っていたが、江戸時代は幕府が、樅、栂、欅、榧、栗、杉を留木として丹沢での伐採を禁じていたとのこと。なるほど、わざわざ残された地帯だったのだ。理由はともあれ、そう遠くないところにこのような地域があるのはありがたい。

 書籍化を想定されてない段階の文章を集めたものなのだろう。内容は少し散漫だが、筋が通っているのは筆者の「丹沢愛」である。自然、登山、昔話など、読んでいて微笑ましい部分もあった(ヤッホーと吠える犬など)。

 驚かされるのはやはり日本語力。50年住んでいたからってこれほど書けるようになるのだろうか。日本在住歴30年をこえながら、コミュニケーションは問題ないものの、書けない西洋人をたくさん知っている。読む前に翻訳者の名前を探してしまったが、本を読んでみると、外国人ならではの新鮮な日本語もあり、本人が書いたものと納得させられた。評判が良かったようで、続、続々と続いたようだ。入手は難しいが見かけたら読んでみたい。