晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「英語の極意」

 NHKラジオ講座でおなじみだった杉田敏さんの本。AIの発達と代用によって、言語そのものを学ぶ意義は薄れてくるかもしれないが、背景にある文化を学ぶ必要はでてくると主張。そうすることによって、AIではできないような(いつか追いつき抜かれるかもしれないが)、英語を話せるだけではなく、あなたの国の文化も理解していると示すことができるという。

 「やさしいビジネス英語」(その後、改名)がちっとも「やさしくなかった」講座だった杉田さんらしく、ややハードル高めの要求を学習者に求めてくるな。demanding なところも学習者を思えば、なのだろう。

 英語の背景知識として、よく言われるのが聖書やシェイクスピアの知識。信仰の程度に差はあるし、英語圏の人が必ずしもキリスト教信者じゃはずだが、まだまだ「常識」とされているのだろう。

 一昔前のマクドナルドのキャッチフレーズというか広告スローガンだった、i'm lovin' it。love とか know とか状態を表す動詞は進行形にならないと教わったが、進行形を使う事で、「好きでたまらない」というニュアンスがでるという。すべて小文字なのは、SNSなどであまり大文字小文字の区別をしなくなった影響か。入力時には確かに面倒だ。

 杉田さんは転職を繰り返しており、以前書いた英語での辞表を本書で公開している。「一身上の都合」として、「去る者は多くを語らず」式の日本語の辞表と違って、辞める会社への感謝を述べるとともに、移る会社の名前こそ出さないが、次の仕事への意欲を示すようなものになっている。ここらは文化の違いを感じる。

 グローバル企業の会社名などの由来も面白い。Amazon あたりは分からなくもないが、Trident や Nikeギリシャ神話からいただいてきた名前。よくまあ、これまで使われずに残っていたなと思ったりもするが。

 その他、ことわざ、決まり文句、イソップなどから、いろいろと紹介されている。内容はすごく面白いのだが、どうも体系的でないというか、もう少し読み手の頭に入るような工夫ができなかったかと思う。新書の限界かもしれない。杉田さんは、「そこからは学習者の意欲の問題」と言われるかもしれないが。