晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「カミサマはそういない」

 深緑野分さんの「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」を購入済みなのだが、なかなか読むタイミングが合わない。タイミングが合わないというのも変な話なのだが、評判はいいし、タイトルも刺さる。なら読んでみりゃいいじゃんってところなのだが、取りかかろうとすると仕事がらみの本や資料読みが降ってくる。この作家を知る時間的余裕がない、と思ってたところに短編集がでた。「カミサマはそういない」。深緑野分体験としては、ここらから始めるのがいいだろう。

 ご本人曰く、一番ダークな作品集だそうな。著者との年齢的なギャップもあるので、どこまで楽しめるかが不安だった。深緑さんが骨太なミステリー系という勝手な印象はある。でも作品は集英社の「すばる」に発表されたのが主だ(一編だけ書き下ろし)。「すばる」は他の文芸誌と比べて対象年齢が少し低いという印象も持っている。ミステリー、SF、ホラーの作品を扱っているが、ホラーとなると、正直苦手である。昔、読んだ記憶でいくと、宮内悠介さんあたりが近いのだろうか。

 「伊藤が消えた」「潮風吹いて、ゴンドラ揺れる」「朔日晦日」「見張り塔」「ストーカーVS盗撮魔」「き(食偏に幾)奇譚」「新しい音楽、海賊ラジオ」の7編。「朔日晦日」だけが書き下ろしである。

 「伊藤が消えた」は解説によると、男性ものの〝イヤミス〟なのだそうだ。後で説明する文章を読むまでわからなかったのだが、読んだ後に〝嫌〟な気持ちにさせる〝ミステリー〟なのだそうだ。あまりこの手を読まないので(映画もみない)判断は難しいのだが、やっぱり怖かった。言葉の選択が上手いのだろうか。世代が違うので、いわゆる「若者言葉」が連発されているが、それでいて重みを保っている。

 「見張り塔」が戦争もので、もしかしたら「コック」や「ベルリン」と重なるところがあるだろうか。詳しく書くつもりはないが、戦争の狂気と個の狂気が入り交じった作品だった。

 初めて食べた外国の料理が以外と口に合ったという感じか。準備運動は終わったので、そろそろ向き合うか。